極楽だの不老長寿だの
菊池寛に「極楽」という短編がある。こんなあらすじ。
あの世に旅立ったおかんは、南無阿弥陀仏と唱えながら極楽浄土をめざす。無事極楽にたどりついて、先に亡くなった夫と再会する。そこは苦しみも痛みもない世界だった。夫との日々は平穏だったが、なにかものたりない。このままずっとここにいるのか、退屈さを感じるようになる。で、地獄はどうかと夫に問うと。ここより退屈はしないだろうと答えて黙ってしまう。夫と地獄の話をするときだけが退屈しのぎとなる。
菊池寛は、世の皮肉さ、人間の至らなさ、弱さを描いたものがいくつもある。「忠直卿行状記」「入れ札」あるいは「藤十郎の恋」などが知られているが、この「極楽」も、意表をつく名作である。夏目漱石などよりおもしろい。気に入っている。
永遠の命を得た人を描いた物語がある。ジョナサン・スイフトの「ガリバー旅行記」の第二章にストラルドブルグという老いたまま死ぬこともできない人間が登場する。
ガリバーは、上陸した島でストラルドブルグという不死の人間が住んでいると聞く。死ななければなんでもできると羨ましく思い、ぜひ会いたいと島の人に申し出るのだが、会わない方がよいと諭される。かれらは愚痴ばかりで、なにも前向きなことはしないと軽蔑されている。かれらに会ってみると、貪欲で嫉妬深い、若者は放蕩で、年寄りは惚けている。ガリバーは、思い描いた不老長寿とはほど遠いことを知ることになる。
不老長寿というけれど、何の苦労もないあの世はつまらない。菊池寛もジョナサンも言いたいのだろう。
ついでのひとこと
ジョナサン・スイフトの著作に「奴婢訓」がある。数年前に改訂版が岩波文庫からでたけれど、さして話題にはならなかった。人間のずるさを皮肉った傑作である。愉快でクツクツと笑える。お薦め。
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