「未完成の映画」
新型コロナウイルス感染はまだ続いているけれど、気にするほどの感染症ではなくなった。症状も軽い。ウイルスもヒトと折り合いをつけてきたのだろう。
コロナには感染しなかった。それほど厳重に感染防止をしたわけではなかったが、幸いなことである。今はマスクはしない。病院に行くと、マスクをしろとスタッフから言われる。仕方なしにマスクをするようにしている。

ここにきて、新型コロナを扱った映画が上映されている。「新世紀ロマンティクス」はゼロコロナ下の中国を描いていた。「フロント・ライン」はダイアモンド・プリンス号の騒動をベースにしている。「未完成の映画」は感染が始まったころのビル封鎖を描いている。中国映画である。アートセンターで観てきた。
10年前に中断された映画を完成しようと監督はスタッフやキャストを呼び寄せる。撮影が再開される。2020年の春節(旧正月)までにはクランクアップする予定だったが、新型ウイルスの感染が噂されるようになり、事態は急変する。撮影現場のビルが封鎖されてしまうのだ。出ることも入ることもできなくなってしまう。
主演のジャオは新婚。妊娠していた妻は無事出産するが、妻子に会うことはできない。唯一のコミュニケーションはスマホのビデオ通話である。不自由だが、スマホがあってよかった。
後半になると、縦型の映像が多くなる。スマホの動画である。映画自体がドキュメンタリータッチなのに、さらにドキュメンタリー感が深まる。実際に映された映像をつかっているのかもしれない。
封鎖は武漢から始まったが、あれ、どのぐらい続いたのか忘れてしまった。のちに大々的な都市のゼロコロナ政策につながっていく。自由を奪う強引なやり方だった。
李文亮という医師の写真も出てくる。コロナ感染の広がりを最初にSNSで発信した人である。そんな医師がいたことを思い出す。しばらくしてその医師も感染して亡くなった。
やがてコロナはいくぶん治まる。武漢では、清明節(4/4)の日、信号を3分間すべて赤にして、コロナ被災者を追悼したという。この映画でそれを知った。
映画は混乱の様子を伝えているだけだが、引き付けられる。東京フィルメックスで観客賞を受賞したのもうなずける。
コロナ禍の記憶も薄れつつある。ウクライナやパレスチナの戦争に世の関心は移っていった。トランプ関税もあるし、備蓄米騒動もあるし。