『資本主義の敵』
ハン・ガンがノーベル賞をとってから韓国の小説は注目をあびるようになった。これまで一冊も読んだことはなかった。とくに理由はない。韓国映画はけっこう観てきたのだが・・・。
チョン・ジアの『資本主義の敵』を新聞書評で知った。面白そう。で、読んでみた。
短編集。著者は女性ね。「資本主義の敵」というタイトルから社会主義活動を描いたものかとおもったが、そうではなかった。著者の父親は社会主義者としてパルチザン活動をした。その点では資本主義の敵であったが、ここで描かれるのは、資本主義に背を向ける自閉家族である。
果てしない欲望を動力として大量生産と消費を追い続け、膨張する資本主義の電源をオフにする。慢性的な欲望はない。GDPに貢献するような消費活動はしない。そんな一家を描いている。それを嫌いながらも、欲望にまみれて前進するしかない我ら人類の不運な姿も映し出している。おもしろい視点だ。
いくつもの短編はつながりはない。それでも、韓国の戦後史を色濃く反映している。それが新鮮に映った。韓国の競争社会も描いている。魯迅を連想させるような短編もある。滑稽な登場人物にも惹かれる。
著者の父親についても言及しておく。戦後、国防警備隊にいた。済州島蜂起(4・3事件)の折。李承晩から鎮圧命令が出される。これを拒否した一団は山に逃げ込み、反政府闘争を始めた。社会主義を目指したが、北とも対立した。
激動の時代であるが、そういうことがあったなどとは日本人は知らない。へー、そうだったのかと驚くだけである。
他におもしろい短編もあるが、とりあえず、ここまで。ハン・ガンの著作も読んでみたくなった。
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