『90歳、男のひとり暮らし』
著者は阿刀田高。タイトルを知って、奥様は亡くなったのかと思った。かつて、奥様、阿刀田恵子さんの朗読を何度か聴いたことがある。巧みな朗読だった。
本書の最後に、恵子さんが2年ほどの施設での暮らしの後、今年の5月に亡くなったと記されている。
男のひとり暮らしは女のそれより大変だと聞く。わたしは夫婦二人の暮らしだから、実感はわかない。妻は間違いなくわたしより長生きする、おそらく。男のひとり暮らしはないと楽観的に考えている。
齢をとると寝付けないという。90歳の著者は、「源氏物語」の各巻を、桐壺、帚木、空蝉・・・と全五十四帖を思いうかべる。就眠儀式である。わたしも似たようなことをやっている。歌舞伎「三人吉三」の大川端の場、お譲吉三のせりふ、「月もおぼろに 白魚の 篝もかすむ春の空・・・」とか、「曽根崎心中」の「この世もなごり夜もなごり 死にに行く身をたとふれば・・・」とか。さして効果はないが。
肩の力を抜いてシンプルに暮らす様子が描かれている。無理をせずだな。昨日できたことが今日はできない。嘆くなかれ。それが老い そういうものだ。達観である。
老いのおそれの一つが病気である。
奥歯が痛む。息切れがするようになった。呼吸器科をたずねると、心臓ではないかと診断され、循環器系に回された。狭心症と判明した。で、ステント手術を受けることになった。歯科医院に行っていたら心臓が疑われることはなかっただろう。手遅れになっていたかもしれない。
おそれのもう一つはボケであるが、著者はなさそうである。
著者の著作を思い浮かべながら読んだ。著作のタイトルはわかるが、内容となるとさっぱり浮かんでこない。ま、そんなものだろう。











