べらぼう
井上ひさしの『手鎖心中』を読み返した。50年以上前に読んだものだからほとんど憶えていない。ああ、そんなストーリーだったかと記憶はほとんど蘇らない。
読み返したのは大河ドラマの「べらぼう」である。大河ドラマと重なる小説だからだ。こまかなことは省くが、山東京伝は60日の手鎖の刑をうけた。蔦屋重三郎は財産の半分を没収された。『手鎖心中』の主人公は戯作者になりたくて、自ら進んで手鎖となった。たった3日だったが。
もっと大河ドラマのストーリーと重なるかとおもっていたが、そうでもなかった。
「べらぼう」の語源は、ご飯をヘラでのばして糊にするところからきている。ヘラでご飯をつぶすから穀つぶしと同じ。そんな蔑称。罵倒のことば。へらぼうでは軟弱だから、それを濁音にして「べらぼう」とした。
井上ひさしの文中では、「このべらぼうめ」を「こんべらばア」と江戸の言葉はせわしなく暑苦しいと書いている。「べらばア」である。
江戸ことばに、「べらんめえ」がある。これも同じ語源である。